図・写真を除く文章のみの掲載。
あとがき
出会いのご縁の中には、運命をかえるほどの強烈なエネルギーを秘めているものも少なくない。
私たちは生まれ故郷から七六年目にして、それも突然の話から一〇〇〇キロメートルも離れた広島に移って来た。平成二二年(二〇一〇年)三月二五日のことだ。それから二一日目の四月一五日の夜八時過ぎのこと、そろそろ落ち着いてテレビでも見てみようか、とスイッチを入れてみたら、画面一杯に懐かしいお方がインタビューを受けていた。
そのお方は、元・総理大臣の中曽根康弘先生であった。齢九十二才といわれるが、ピンと背筋を張って、かくしゃくとして、一言一句かみしめるように明快にお話をなされていた。見入っていた終盤のころだったか、「今、大事になさっておられることはどんなことでしょうか」と尋ねられた時のことだ。中曽根先生は、即座に内ポケットから一冊の手帳を取り出した。ぱっと開いて見せた文言を目にした私は、これはうれしいことだと胸一杯になった。その文言は、中曽根先生が大切になさっている人生哲学であり、そこには、「結縁・尊縁・随縁」という六文字が書かれていた。そのことを先生は「三縁」と呼んでいた。「縁を生かし、縁を大切にし、人間関係を大切にするということ。そして、縁を結び、縁を尊び、縁に従う。それは、温かい人間関係を大事にすることが大切なのだ」と結んでおられた。さらにその手帳は肌身離さず毎日一、二度はご覧になるという。私は意を強くして感謝した。
とかく敬遠されがちな神秘世界のことを求め続けている私は、はたと消極的な心がちらつくものだが、ふとスイッチを入れたテレビのご縁で一国の元・総理大臣の座右の銘の人生哲学が「縁の世界」であったことを知り、自分の求め続ける世界を強く誇りに思ったのだ。ここに紙上を借りて、出会いのご縁に感謝する。
今後、神秘の大樹シリーズは、第二巻、三巻、四巻へと続く。すべてが実体験からの話である。できる限りに写真を添えてその証明としていく。いのちの中では何が起きているのか、また、いのちとはどういうものなのか、と果てしなくつきつめてゆく。
「心と縁と運命」について、いのちの監視下にある霊魂の世界を体験に基づいて開いていきたいと思う。
著者 菅原 茂
昭和九年(一九三四年)山形県生まれ
山形県立酒田商工高等学校(現・酒田商業高等学校)卒業後、農業協同組合、商社、ダム工事、海中工事、ビル専門防水工事、旅館業、不動産取引業等を経て、自己改革と生命世界(生きる原点・心の原点)と共時性現象について、妻と二人三脚で探索を続けている。その間、鳥海山麓の原野を開拓、十二年間、鶴亀農場を体験。
2011年 1月 1日発行
著者 菅原 茂
発行所 おりづる書房
©おりづる書房