共時性と因果性

C.偶然と因果

⑶因果性が「ない」のか「説明できない」のか

 

『自然現象と心の構造』の表紙画像ユング氏は「狭義の共時性は、たいていは個人的な例で、実験的にくり返しがきかない。と述べています。たしかに、本人でなければ実感しにくいのは事実ですから、個人的な例は第三者によって客観的に評価できないという点は一般論として挙げられます。ただし、実験によって科学的な法則性を証明する手法を適用できることがらは、そもそも限定的であるはずです。(⒈『自然現象と心の構造』p.138)

 

また、心は常に変化していて一定ではない性質があることを考慮すると、「実験的にくり返しがきかない」のは、ある意味当然のことではあります。物の性質にくらべて、心の性質はいっそう不安定であると考えられるので、狭義の「因果性」という尺度ではとらえ切れないということです。ですから、偶然の一致(共時性)が「因果的には関係のないというのは、関連がないという全面的否定ではなく、今の物質科学の尺度(=因果性)では説明ができないと受けとめるべきです。このことをふまえると、共時的なことがら同士は因果的に関係ないという論理、または「非因果的という表現には、誤解を生む可能性があることがわかります。(⒉『自然現象と心の構造』p.33,⒊ 同 p.39)

 

というのも、私たち一般の日本人には、もともと仏教用語としての意味をもつ「因果」という言葉のほうが感覚的に何となく馴染なじみがあると考えられ、科学に適用される狭義の「因果性」と混同するおそれがあります。物の見方・尺度・その理論である科学が、「因果」の概念に対して正否を判定したり、観念そのものを否定したりしているとは考えられません。物質科学的な手法では因果性を判定できないという見地から、以下のようにユング氏は(同著書において)結論づけていると考えられるのです。

 

  • 共時的要因は、空間時間因果性という承認されている三組の上に第四番目としてつけ加えられるべき知的に必要な原理の存在を主張しているだけである。(p.132)
  • 因果性は空間と時間の存在と物理的変化に拘束されて」「意味深く偶然に一致する諸因子間の相互連関は、どうしても非因果的なものと考えられねばならない(ともにp.39)

 

共時性現象のもつ意味が、個人的(特殊)か普遍的かは、心の方向性が大きく関わっているとされます。科学的・客観的尺度とはちがって主観的であるとはいえ、縁を引きよせる当事者の心が、何を観ているのか、どこに向いているのかによって、現実に起きることがらにも差が生じるということです。心の次元や純度、思いの深さなどに応じて、縁にも差が生じると考えることは、心と体の関係や先ほど述べた心と物質一般の関係をふまえると、さほど飛躍したものではないとおもいます。

 

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偶然と因果⑷

「自然と宗教と科学」

 

引用・参考図書

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自然現象と心の構造
非因果的連関の原理

C.G.ユング,W.パウリ/
海鳴社/1976年

1955年に米国と英国で出版された英語版の『自然の解釈と精神』(The Interpretation of Nature and the Psyche)の日本語訳版。心理学者であるカール・グスタフ・ユング氏の論文を、同じく心理学者である河合隼雄氏が、物理学者であるヴォルフガング・パウリ氏の論文を、科学史研究者の村上陽一郎氏が翻訳している。

 

 

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書籍『量子力学と意識の役割』を図書館情報サイト「カーリル」で検索します

 

量子力学と意識の役割

ブライアン D.ジョセフソン/フリッチョフ カプラ/O.C=ド・ポールギャール/リチャード D.マトゥック/デヴィッド・ボーム/竹本忠雄監訳/たま出版/1984年

物理系とは異質の観測主体(意識)の存在を認めないと、量子の物理的過程の解釈はできないという課題に挑んだ物理学者たちの論文集。デヴィッド・ボーム氏による論文は、「宇宙の暗在系-明在系と意識」。

 

 


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書籍『死んでも生きているいのちのあかし』の詳細・閲覧ページにリンクしています

 

死んでも生きている
いのちの証し

菅原茂/たま出版/1997年

 

共時性現象の体験記録をもとに、生命の本質は不滅だと伝えている。 酒乱人生から夫婦二人三脚で新たな人生を再出発させた著者。自らの足元を照らすかのような共時性現象の記録を随想としてまとめている。また、本の表紙を飾る稲穂はこの著書の本質を象徴している。

 

 


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私たち現代人が見失っている食の本質。生命と生命現象の根源は食にある。自分のいのち食のいのちに対する考え方が問われている。

 

参照資料の索引

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